山陽小野田市出身の児童文学作家、村中李衣さん(60)の新刊児童書「あららのはたけ」が、偕成社から出版された。宇部市小野を舞台にしており、自然豊かな地方に移り住んだ少女えりと、都会に住む仲良しのエミの手紙のやりとりを書き連ね、2人の深い友情や心の成長を浮き彫りにしている。
村中さんは岡山ノートルダム清心女子大教授として学生を教える傍ら、本の執筆、絵本の読み合いを続けている。7年ほど前から小野湖近くの畑を週末のたびに耕しており、自身が感じた草花の生命力、自然の不思議も新作に反映させた。
小野と神奈川県横浜市。引っ越しで離れ離れになった後も、手紙で友情を育むえりとエミは、いじめで不登校になった幼なじみのけんちゃんを応援するとともに、嫌がらせをする子が抱える孤独に思いを巡らせる。
えりが自宅にある「あららのはたけ」でジャガイモやイチゴなどを育て、自然と触れ合う描写を随所に盛り込んだ。人が「あらら」と驚くことを当たり前にこなし、マイペースに育ち、生きている野菜や虫たちの姿を通じて「自分と他人を比べて悩まなくていい」というメッセージを込めた。
村中さんは「自然の奥深さ、手紙で気持ちを伝え合う素晴らしさを感じていただければ」と話している。A5判211㌻、税別1400円。
村中さんは2012年に「チャーシューの月」で日本児童文学者協会賞を受賞。「かあさんのしっぽっぽ」は第61回青少年読書感想文全国コンクール課題に選ばれ、17年に第1回日本絵本研究賞を受けた。